DtoCとは?メリット・デメリットや成功させるポイントを解説
企業対企業による取引を「BtoB」、企業対一般消費者による取引を「BtoC」と呼ぶことは、すでに多くの人が知っているでしょう。しかし、ビジネスモデルにはほかにもさまざまな意味をもつものが存在します。
中でも特に注目されているビジネスモデルが「DtoC」です。「D2C」とも呼ばれており、高い収益性を確保できることから2020年前後に日本でも多くの企業が参入し始めました。
当記事では、DtoCの概要やBtoCとの違い、さらにメリット・デメリットを紹介します。最後に、DtoCを成功させるためのポイントについても解説するため、DtoCへの事業参入を検討しているならぜひ参考にしてください。
目次
1. DtoCとは?
DtoCとは、中間業者を介さず自社サイトで消費者に直接販売するビジネスモデルです。「Direct to Consumer」の略称であり、別名「D2C」とも呼ばれています。
DtoCは、2010年頃にアメリカで発祥しました。eコマースプラットフォームの誕生によりEC開発の利便性が高まったことを皮切りに大きく注目を集め、2020年前後には日本でもDtoC事業の参入企業が増加しました。
現在、日本のDtoCとアメリカのDtoCは、特徴においてやや違いが生じています。日本のDtoCは品質にこだわった比較的価格の高い商品が主流となっている一方で、発祥地であるアメリカのDtoCは品質の高さよりも価格の安さにこだわった商品が多い傾向です。
1-1. DtoCとBtoCの違い
DtoCと似たビジネスモデルとして、「BtoC」が挙げられます。BtoCは「Business to Consumer」の略称であり、中間業者を介して自社サイトで消費者に商品を販売するという、EC販売においては最もポピュラーなビジネスモデルです。
DtoCとBtoCの違いは、中間業者の存在です。前述の通り、BtoCは販売者(企業)がメーカー・問屋といった仲介業者から商品を仕入れます。
一方で、DtoCはメーカー・問屋を一切介しません。販売商品はすべて自社で企画・製造し、消費者に対する直接販売まで一貫して行うことが特徴です。
1-2. DtoCが注目されている理由
DtoCが注目されている理由には、下記が挙げられます。
●SNSの普及による消費者ニーズの変化
●ネットショッピング利用者の増加
●サブスクリプションの拡大
2. DtoCのメリット3選
DtoCは消費者と直接取引することから、あらゆるメリットが期待できます。主なメリットは、下記の通りです。
【DtoCの主なメリット3つ】
ここからは、それぞれのメリットについて詳しく紹介します。
2-1. コストの削減・利益率向上が期待できる
DtoCの最大のメリットが、コストを削減できるという点です。
前述の通り、DtoCはメーカー・問屋などの中間業者を介さず消費者と直接取引を行うため、中間コストは必要ありません。中間コストの削減によって、利益率の向上にもつながる点もメリットです。
また、DtoCは実店舗をもたずオンラインで運用することとなります。したがって、テナント料や店頭に立つ人件費、その他管理費といった店舗運営費も発生しません。中間マージンや店舗運営費を削減できれば、その分さらに品質の高いリーズナブルな商品の企画・製造ができる点も、隠れた魅力と言えるでしょう。
2-2. 価格競争を避けられる
オンラインショップの開設においては、楽天市場やAmazonなどの大手ECモールを利用するケースが一般的です。しかし、これら大手ECモールは参入店舗が多く、同カテゴリでの価格競争が生じます。
数ある競合他社がいる中で自社製品を購入してもらうためには、1商品あたりの利益率を下げてでも販売価格を抑えるといった工夫が欠かせません。
しかし、DtoCビジネスでは自社ECサイト制作・運用が一般的です。自社ECサイト内で自社の商品だけをじっくりとチェックしてもらえるため、大手ECモールにおける競合他社との価格競争に悩まされることはありません。
2-3. 顧客情報を収集しやすい
自社ECサイトの運用が基本となるDtoCのビジネスモデルでは、自社サイトを利用するユーザーの詳細なパーソナルデータを容易に収集できます。加えて、直接商品を届けるため、よりダイレクトな顧客のフィードバックも得られます。
収集したユーザー属性・購入履歴・行動履歴などの顧客データや、顧客フィードバックをマーケティングに反映させられれば、より顧客一人ひとりのニーズに適した商品提供・ブランド構築が可能となるでしょう。
3. DtoCの主なデメリット2つ
DtoCはメリットの多いビジネスモデルですが、当然デメリットも存在します。
【DtoCの主なデメリット2つ】
次に、それぞれのデメリットについてより詳しく紹介します。
3-1. ECサイト・物流システムの構築にコストがかかる
DtoCブランドを立ち上げる際は、消費者と取引を行うための自社ECサイトや独自の物流システムを新たに構築する必要があります。
また、ECサイトや物流システムを構築したあとも、これらのシステム環境の整備に加えて、顧客からの返品処理・クレームにも対応し続けなければなりません。
DtoCでのビジネスが軌道に乗り始めたら、システム整備や顧客対応といった部分の維持費は問題なく支払えるでしょう。しかし、顧客がまだまだ少ない最初の段階においては、構築コストに加えて維持費によって赤字となる可能性もあります。そのため、立ち上げの際は多くの資金が必要となる点に注意が必要です。
3-2. 自社でブランディングする必要がある
大手ECモールへの出店では、ECモールそのものの集客力による恩恵を受けられます。しかし、DtoCモデルのECサイトは独立性や露出度が圧倒的に低いことが特徴です。また、自社ECサイト構築当初は認知度も非常に低いため、自社で1からブランディングを行う必要があるでしょう。
認知拡大や商品ブランディングに有効な方法の1つには、広告配信による宣伝活動が挙げられます。とはいえ、広告効果は一過性になりやすく、継続してファンを囲い込むためにはSNSやメディアサイトを駆使したWebマーケティング施策も必要です。
また、自社でブランディングを行うには、それだけ人件費・運用費といったコストも生じます。DtoCにおいてブランディング活動は今後の売り上げを左右する重要な要素となるため、できる限り予算を投入することが大切です。
4. DtoCを成功させるには?
DtoCを成功させる近道は、「ブランド力を高める」ことです。
DtoCは消費者に商品・サービスを直接提供するため、ブランド力が最も肝心と言えます。知名度が低い場合は、あらゆる手法を用いて商品ブランドを高めながら魅力をPRする必要があります。
ブランド力を高めるためには、Twitter・Instagram・FacebookなどのSNSや、Web広告・Webサイトなどを活用したマーケティングが有効です。SNSは種類によって性別や年齢層といったユーザーデータの傾向が異なるため、SNSを用いたマーケティング手法を取り入れる場合は、成功事例なども参考にしながら適切なPR方法を実施するとよいでしょう。
また、マーケティングを実施する際は、市場のリサーチやターゲットの洗い出しを行い、スモールスタートで始めましょう。多方面におけるマーケティング知識を要するため、必要に応じて外部に依頼をしたり、適切なツール・システムを用いたりして効果の最大化を図ることもおすすめです。
まとめ
DtoCは、メーカー・問屋といった中間業者を介さず自社サイトで消費者に直接販売するビジネスモデルです。販売商品はすべて自社で企画・製造し、消費者に対する直接販売まで一貫して行うことが特徴となっています。
DtoCには、コスト削減・利益率向上が期待できるなどのメリットがある一方で、ECサイトや物流システムの構築にコストがかかったり、自社でブランディングを行ったりする必要があるというデメリットもあります。
しかし、これらのデメリットを踏まえてあらかじめ戦略を立てて事業参入すれば、失敗のリスクは格段に低くなるでしょう。ここまでの内容を参考に、ぜひ自社にDtoCを取り入れるかどうかを検討してみてください。