【入門編】Agent Development Kit でAIエージェントを作ってみた
- 柳川 陸
- 4月18日
- 読了時間: 6分
更新日:4月30日
著者:柳川 陸(金融NEXT企画部 AI開発課)
Las Vegas で開催された Google Cloud Next 2025 では、AIエージェント関連のサービスやOSSについて盛り沢山の発表がありました。本記事では、入門編としてその全体図をキャッチアップしていきます。
また、次回の記事では実践編として今回発表された AIエージェント開発フレームワークである Agent Development Kit( ADK ) を用いて、簡単なAIエージェントを作っていきます。
入門編
AIエージェントの全体図
まず初めに、Google Cloud のAIエージェント関連の発表の全体図について理解していきたいと思います。
全体図としては上記のようになっており、AIエージェントを利用するための Agentspace、 AIエージェントの実行環境である Agent Engine、AIエージェントを開発するための Agent Frameworks やその他の仕組み があります。
AIエージェントの開発
Agent Frameworks
Agent Frameworks は、実際にAIエージェントを開発するために利用可能なフレームワーク群です。LangGraph、LangChain、CrewAIやAG2などの様々なフレームワークを使用可能です。その中でも特に注目を浴びているのが、今回発表されたオープンソースの Agent Development Kit( ADK )です。PythonコードによってAIエージェントの思考ルールや動作を定義でき、約100行程度の直感的なコードで実用レベルのAIエージェントを構築できることが特徴のようです。
本記事の執筆時点で、 Agent Development Kit のGitHubリポジトリのStar数は6.7kとなっています。他のフレームワークと比較するとまだStar数は多くはないですが、リリースとともにうなぎ上りに増加していることや、Google Cloud との親和性を考えれば、これからAIエージェントを開発するときの一手を担う存在になっていくものと考えられます。
GitHub Star History( 赤線 = Agent Development Kit )
Agent Garden( 全体図には含まれていませんが掲載します )
Agent Garden は、AIエージェントとツールのサンプル集です。シングルエージェント型やマルチエージェント型、会話型やワークフロー型などの様々なユースケースに対応したAIエージェントのサンプルが多数収録されています。AIエージェントをゼロから作りこむことなく、これらのサンプルを組合せたり修正することで、素早く開発を進めることができます。旅行コンシェルジュやFOMC分析エージェントなど、執筆時点で8個のサンプルが公開されています。
以下の画面において特定のサンプルを選択すると、そのサンプルが含まれるGitHubリポジトリにリダイレクトされるようになっています。
Vertex AI Agent Builder にある Agent Garden の画面( プレビュー版 ) A2A : Agent2Agent Protocol
Agent2Agent Protocol( A2A )とは、今回のイベントにおいて Google が提唱したマルチエージェント時代を見据えたエージェント同士が協調動作するための基本的なオープンプロトコルになります。このプロトコルにより、異なるベンダーやフレームワークで構築されたエージェント同士の相互運用が可能になることで、自律性向上、生産性向上、効果が倍増するとともに、長期的なコスト削減が実現されるとのことです。
以下の図は、A2A を使用してエージェント同士の協調動作を実現する仕組みを表しています。図の左側のエージェントは Agent Development Kit で実装されており、図の右側のエージェントはそれ以外のAIエージェント開発フレームワークで実装されているものです。それぞれのエージェントが異なるフレームワークで実装されていても、A2A を使用することでエージェント間の協調動作を実現することができます。エージェント同士はJSON形式の Agent Card を使用して自身の機能を公開し合うことで、タスクを実行できる最適なエージェントを特定して通信することができます。( 図中の MCP についてはこの後に説明します )
以下に示すとおり、執筆時点で A2A の取り組みに賛同するパートナー企業は50社を超えており、事実上の標準プロトコルなることが予想されます。
MCP : Model Context Protocol( 全体図に無いものの、 A2A と一緒によく話題になるため掲載 )
Model Context Protocol( MCP )は、Anthropic が2024年11月に提唱したオープンプロトコルです。エージェントと外部ツール( データソースやサービス )との連携を実現するために統一されたインターフェースを提供するプロトコルです。
以下の図は、MCP を使用してエージェントと外部ツールを連携する仕組みを表しています。まず、LLMアプリケーションは内部にMCPクライアントを抱えています。そしてデータソースやサービスはMCPサーバーを起動しており、これによりMCPクライアントとMCPサーバーの連携が可能になります。MCPサーバーはあくまでもローカル上で起動されており、インターネット上に配置されていないことに注意してください。
MCP を使用することにより、エージェントが外部のデータベースやAPI、ファイルシステム等にアクセスして追加情報を得たり、何らかの操作を実行することが可能になります。例えばWeb検索や計算機能などをMCPとして提供できれば、エージェントはより複雑なタスクを実行することができるようになります。また Agent Development Kit もこの MCP をサポートしており、MCP に対応した様々なデータソースや機能拡張モジュールをエージェントに簡単に組み込めます。
AIエージェントの実行環境
Agent Engine
Agent Engine は、Agent Development Kit などで開発したAIエージェントを本番環境で動かすためのフルマネージド実行基盤です。開発者は Agent Engine にAIエージェントをデプロイするだけで、サーバ管理やスケーリングを意識せずにAIエージェントを稼働させることができます。また、デプロイしたAIエージェントについて モニタリング や 評価 を行うことができます。
また、Agent Engine にデプロイしたAIエージェントについては、後述する Agentspace に登録することで、エンドユーザーに提供することができます。

AIエージェントの利用
Agentspace
Agentspace は、エンタープライズ向けのAIエージェントプラットフォームです。利用可能な機能としては大きく以下2つになります。
検索機能
社内の様々なデータソースから必要な情報を横断的に見つけ出す検索機能が搭載されています。利用可能なコネクタは既に100を超えており、Google Drive、BigQuery、SharePoint、Jira、ServiceNow など、Google製品や3rd Party製品を問わず多くのコネクタが利用可能です。
AIエージェント機能
複雑な作業を実行することができるAIエージェント機能が搭載されています。
利用可能なAIエージェントは、Google が今回のイベントで発表した Deep Research Agent や Idea Generation Agent 、その他にも社内・外部開発のカスタムエージェントを利用することで、情報収集、要約、タスク実行などが可能になります。
上記以外にも、エンドユーザーがノーコードでAIエージェントを作成できる Agent Designer 、エージェントを一元管理できる Agent Gallery 、Google Chrome の検索ボックスから Agentspace にアクセスできるようになるなど、さまざまな機能が発表されています。

まとめ
最後にもう一度、全体図を以下に示します。
これまで説明してきたように、AIエージェントの開発・AIエージェントの実行環境・AIエージェントの利用の3種類に大別されるイメージになると思います。
Google Cloud におけるAIエージェントの全体図をある程度理解できたところで、次の記事からは実際に Agent Development Kit を用いてAIエージェントを作っていきましょう!