【Google Cloud Next 2026】基調講演速報
- 4月23日
- 読了時間: 6分
更新日:4月24日
著者:纐纈・駒場(金融NEXT企画部)
Google Cloud Next 2026がラスベガス・Mandalay Bay Convention Centerで開催されました。
初日の基調講演(Keynote)では、Google Cloud CEO Thomas Kurian氏とGoogle CEO Sundar Pichai氏が登壇し、「Agentic Enterprise Blueprint」 を発表しました。昨年の「Agentic Era」宣言から1年、Google Cloudは「PoCの段階は終わった」と明言し、エージェントの全社本番運用を支えるフルスタックプラットフォームの全貌を公開しました。本記事では、金融業界に影響の大きい発表を中心にハイライトをお伝えします。
1. Google Cloud Next 2026 概要
開催期間: 2026年4月22日(水)〜24日(金)
会場: Mandalay Bay Convention Center, Las Vegas

会場の様子(当社メンバー撮影)
2. 基調講演ハイライト
2.1 Gemini Enterprise Agent Platform — エージェント時代の「ミッションコントロール」
今回の基調講演の最大の発表は、Sundar Pichai氏が発表した Gemini Enterprise Agent Platform です。「個別のエージェントを作れるか?」というフェーズから「数千のエージェントをどう管理するか?」にフェーズが変わった、という認識のもと、エージェントの構築・デプロイ・ガバナンス・最適化を一元管理するプラットフォームとして位置づけられました。
従来の Vertex AI を拡張・再ブランドする形で、Agent Studio、Agent Registry、Skills & Tools Registry、Agent Marketplace、そしてMCPのネイティブ統合など、包括的なエージェントライフサイクル管理機能を備えます。
特に注目すべきは Agent Identity(各エージェントに固有の暗号IDを付与し、全アクションを追跡・監査可能にする仕組み)と Agent Gateway(組織横断のポリシー適用を一元管理するコマンドセンター)です。金融機関が求めるゼロトラスト・ガバナンスの要件にダイレクトに応える機能です。
エージェントの監査証跡、認可ポリシーの一元管理は、金融規制対応の観点で極めて重要です。Citadel SecuritiesやCiti Wealthなど金融業界の採用事例が複数紹介されたことからも、セキュリティやガバナンス要件の高さを前提とする金融業界において、本プラットフォームが適合しやすい領域であることが示唆されました。
2.2 Gemini 3.1 Pro & 新モデルラインナップ

会場の様子(当社メンバー撮影)
最新推論モデル Gemini 3.1 Pro についても改めて紹介されました。複雑なワークフローオーケストレーションに最適化されており、APIや既存システムと最小限のチューニングで連携できる点が強調されています。Databricks(データ分析・レイクハウス基盤)、JetBrains(開発者向けIDEツール企業)、Replit(ブラウザ上で開発できるクラウドIDE)が採用を表明している点も紹介されました。
併せて、Gemini 3.1 Flash Image(NanoBanana 2)、Veo 3.1 Lite、Lyria 3 Proについても言及され、マルチモーダルモデルのラインナップ拡充が示されています。また、サードパーティモデルとして Anthropic の Claude Opus 4.7 サポート追加についても触れられました。
Gemini 3.1 Pro のオーケストレーション最適化は、金融向けマルチエージェントワークフロー(融資審査、コンプライアンスチェック等)の構築に直結する可能性があり、引き続き注目していきます。
2.3 TPU v8 — トレーニングと推論を分離した第8世代TPU


発表されたTPU-8i/8tとTPU搭載サーバラック(執筆者撮影)
インフラ面の最大の発表は TPU v8 の2モデル展開です。初めてトレーニング専用(TPU-8t)と推論専用(TPU-8i)に分化しました。
TPU-8tは、前世代比約3倍の計算性能、9,600 TPU接続の3Dトーラストポロジー、121 ExaFLOPS(FP4)を実現。「数ヶ月のトレーニングを数週間に」が可能に。TPU-8iは、推論レイテンシを5倍削減し、オンシリコンメモリキャッシュで「メモリの壁」を突破。1,152 TPU/Podで11.6 ExaFLOPS(FP8)、Ironwood比9.8倍の性能を実現しました。
さらに、NVIDIA Vera Rubin NVL72 のサポート(Google Cloudが最初の提供者の一つ)と、134,000チップを47ペタビット/秒で接続する新ネットワーク Virgo も発表されています。
Citadel Securitiesが事例として登壇し、TPU Ironwoodで「週〜日単位のワークロードを時間〜分単位に短縮」「コスト30%削減」を実現したと報告しました。金融機関のリスク計算・クオンツ分析への適用が加速しそうです。
2.4 Agentic Data Cloud — データサイロを超える統合コンテキストエンジン
データ基盤は Agentic Data Cloud として再定義されました。
Knowledge Catalog は、構造化データ(BigQuery)と非構造化データ(PDF、動画等)を統合するユニバーサルコンテキストエンジン。ファイルがGoogle Cloud Storageに格納された瞬間にGeminiが自動タグ付け・エンリッチし、エージェントが即座に利用可能にします。
Cross-Cloud Lake House は、Apache Icebergベースでマルチクラウド対応。AWS・Azureのデータを移動せずにBigQueryから低レイテンシで直接アクセス可能。ベンダーロックインからの脱却を強く打ち出しました。
上記で取りあげた新機能により、従来の分析元データの集約すべきだという発想から"データは置いたまま、どこからでも使える"状態が標準となり、マルチクラウド環境でのデータ活用が劇的な効率化が見込まれます。加えて、従来の「人が検索・分析する」ためのデータ保管場所としての基盤から、「AIエージェントが自律的に判断し行動する」ためのプロアクティブな基盤への進化していきます。
これらは、金融機関にとって大きな課題であるデータサイロの解消への解決手段や、非構造化データの自動構造化による膨大な文書管理や顧客分析などに大きなインパクトがあります。
2.5 Agentic Defense — Wiz統合とエージェント時代のセキュリティ

ブースの様子(執筆者撮影)
セキュリティ分野では Wizの正式統合 が発表されました。Google Cloud + Wiz で全クラウド横断の統合セキュリティを提供。Wizは AI SPM(AI Application Protection Platform)として、Red/Blue/Green Agentが自律的にリスク特定・調査・修正を行うデモを実施しました。
脆弱性の悪用がパッチ公開前に発生する「マイナス7日」時代、初期アクセスからハンドオフまで22秒という脅威環境において、「セキュリティはマシン速度で動く必要がある」というメッセージは説得力がありました。
シャドーAI(組織が把握していないAIモデル・エージェント)の検出・管理は金融規制の観点からも極めて重要です。Agent Identity + Wiz の組み合わせは、エージェント爆発時代のセキュリティガバナンスの有力な解となり得ます。
2.6 Apple パートナーシップ & Workspace Intelligence
戦略的パートナーシップとして、Apple が Google Cloud を優先クラウドプロバイダーに選定したことが言及されました。Gemini技術ベースの Apple Foundation Models で次世代 Apple Intelligence(Siri改良含む)を開発するとのことです。
また、Workspace Intelligence として、Geminiの推論能力をWorkspace全アプリに統合する統一インテリジェンスレイヤーを発表。Gmail・Chat・Drive・Docs・Slides横断で情報を接続し、「15個のタブを閉じて、Workspaceに任せよう」というメッセージが印象的でした。Microsoft 365からの移行が最大4倍高速化する機能強化も発表されています。
3. まとめ — 初日の所感

会場の様子(当社メンバー撮影)
昨年のGoogle Cloud Next 2025では「Agentic Era(エージェント時代)」の到来が宣言され、ADKやA2Aプロトコルなどエージェント構築の基盤技術が発表されました。あれから1年、今年は明確に 「作る」から「運用・管理する」 へとフェーズが進んだ印象です。
基調講演全体を通じて最も強調されたのは、Google Cloud が単なるクラウドインフラやAIモデルの提供者ではなく、エージェント時代における「フルスタック・エージェント・プラットフォーム」 として自社を再定義しようとしている点です。
Signal Iduna(保険、11,000人がエージェント構築)、KPMG(初月90%採用率、100+エージェント)、Walmart(店舗リーダーの業務支援)など、大規模な本番採用事例が多数紹介されたことも、「PoCの段階は終わった」というメッセージの裏付けとなっていました。
引き続き速報をお届けする予定ですのでお待ちください!



