iPaaSとは?注目される背景や導入するメリットも詳しく解説
iPaaSは、複数のシステムやアプリケーションを統合的に連携できるプラットフォームサービスです。データを管理するツールには自社で運営するオンプレミス型とサーバー上で共有するクラウド型がありますが、複数のツールを利用するとデータの管理が困難です。そこで、今注目されているのがコストを抑えながらデータの一元管理ができるiPaaSです。
同じクラウドサービスで似た言葉にSaaS・PaaS・IaaSなどがありますが、それぞれで意味や役割は異なります。
当記事では、iPaaSの基礎知識や導入するメリット・デメリット、似た用語との違いを詳しく解説しています。
目次
1. iPaaSとは?
iPaaSとは、複数のシステムやアプリケーション間における統合的な連携を可能とするプラットフォームサービスです。「Integration Platform as a Service」の略で、アイパースと読みます。
企業がビジネスでシステムやアプリケーションを活用する際は、個々のソフトウェアを孤立させず、連携させてデータの受け渡しなどをスムーズに行う必要があります。
しかし、実際には社内のシステムはさまざまなデータ形式のものが存在し、異なるシステム同士を連携させるのは簡単ではありません。データの保管場所も、社内サーバーのオンプレミスと仮想サーバーのクラウドとでは異なるため、オンプレミス・クラウドの連携も課題です。
iPaaSは仮想的なプラットフォームを作成し、プラットフォーム上で標準の通信フォーマットによるシステム間の連携を可能としています。システム間の連携には各サービスが提供するAPIを用いるため、高速かつ安定的なデータ処理が可能です。
2. iPaaSと似た用語との違い
ITに関する用語の中には、iPaaSと似た言葉がいくつかあります。それぞれの言葉を聞いたことはあっても、用語の意味や違いを詳しく知らない方は多いでしょう。
ここではiPaaSと混同されがちな「SaaS・PaaS・IaaS」と、RPAの違いについて解説します。
2-1. SaaS・PaaS・IaaSとの違い
SaaS・PaaS・IaaSとは、主要なクラウドサービスの種類を指す用語です。それぞれの意味は下記の通りとなっています。
対して、iPaaSはシステムやアプリケーションなどのソフトウェアを連携させるサービスです。仮想的なプラットフォームを提供する点ではPaaSと似ているものの、iPaaSはSaaSを統合することを目的としています。
2-2. iPaaSとRPAの違い
RPA(Robotic Process Automation)は、業務自動化を行うツールです。RPAを導入することで、従来は人が行っていた業務を、ルールエンジンを搭載したソフトウェアロボットが代行するようになります。
システム間のスムーズな連携を行うiPaaSは、業務自動化を実現できる点でRPAと似ています。
2つの大きな違いは、使用環境などの変化に強いかどうかです。RPAはあくまでもルールに沿って動くロボットのため、環境の変化に弱い傾向があります。対して、API連携でデータ統合をするiPaaSは、環境の変化に強い点が特徴です。
ただし、iPaaSにも「APIが非公開のシステムは連携できない」というデメリットがあります。業務フローが固定化されている業務はRPAを、API公開のソフトウェアを使用する業務にはiPaaSを、といった使い分けをしましょう。
3. なぜiPaaSが注目されているのか?
iPaaSが注目されている背景には、近年のDX推進やリモートワーク普及によってクラウドサービスを利用する企業が増えていることがあります。総務省が公表した令和4年度情報通信白書によると、2021年時点でクラウドサービスを利用している企業の割合は70.4%です。
クラウドサービスはソフトウェアの購入・インストールが不要で、導入にかかるコストや手間を抑えながら便利な機能が使えるメリットがあります。
しかし、クラウドサービスを部署ごと・業務ごとで導入することにより、企業内にデータが点在する状況が発生しやすくなりました。データの点在はリアルタイムな連携を難しくして、作業効率の低下や管理コスト増加などの問題につながります。
データ連携の課題を解消する方法として、注目されたものがiPaaSです。iPaaSの導入によって自社のクラウドサービスを統合して管理でき、クラウド環境のメリットを損なわずにスムーズなデータの連携が可能となります。
4. iPaaSを導入するメリット
iPaaSの仕組みは理解できても、どのようなメリットが得られるかをイメージできない方は多いでしょう。
iPaaSを導入する際は、iPaaSの具体的なメリットを把握した上で、自社の課題解決につながるかを確認することが重要です。
ここでは、iPaaSを導入する3つのメリットを解説します。
4-1. システム間の連携を円滑にできる
iPaaSはシステム間の連携を素早く、円滑にできる点がメリットです。
例えば、営業支援システムに新たな顧客情報や取引先情報を追加すると、生産管理部門や経理部門などが関わるシステムにも即座にデータが反映されます。さらにiPaaSはデータの読み込み・書き込みにAPIを使用するため、連携するサービスの仕様変更に強く、安全に連携できるのも特徴です。
複数のクラウドサービスを利用していると、それぞれのサービスで得られたデータを収集・転記する作業に大きな手間・コストがかかります。iPaaSは異なるサービス同士を連携し、自動でデータを収集・転記できるため、業務連携による効率向上が可能です。
また、システム間の連携を円滑にできる点は、新しいシステムを導入しやすいメリットにもつながります。データの移行・連携処理をiPaaSで行えるため、新しいシステムをすぐに導入し、既存のシステムと連携させることが可能です。
4-2. 多角的な分析ができる
部署ごとに異なるシステムの連携ができていない場合、スムーズな集計ができず、分析に時間をかけられないケースがあります。部署によっては十分なデータを収集できず、表面的な数字のみでデータ分析を行うこともあるでしょう。
iPaaSを導入すると、システム間の連携によって各部署に点在している情報を簡単に確認できるため、スムーズなデータ集計・分析が行えます。業務の結果で得られたデータだけではなく、業務の過程で発生した情報も取得できるので、多角的な分析を行える点がメリットです。
クラウドとオンプレミスを連携させることにより、現在のデータを過去のデータと比較する使い方もできます。
4-3. コストを削減できる
従来、システムやアプリケーション同士の連携作業は大きなコスト・労力がかかっていました。膨大な種類があるオンプレミス・クラウドのサービスはそれぞれ異なるシステムであり、連携させるためには独自のプログラムを構築する必要があったためです。
iPaaSは、APIを活用してシステムの連携を行うため、独自のプログラム構築などは行う必要がありません。
iPaaS製品には、ノーコードやローコードでシステム間の連携ができるものもあります。コストや労力を多くはかけられない中小企業でも活用しやすい点が、iPaaSのメリットです。
5. iPaaSを導入するデメリット
iPaaSにはメリットだけではなく、デメリットも存在します。iPaaSを導入するデメリットは下記の2点です。
まとめ
自社のクラウドサービスを統合し、システム間の連携を円滑にできるiPaaSは、企業がリモートワークやDX推進を進めている昨今において注目を集めています。自社が管理する異なるサービスを円滑に連携できるのはもちろん、新しいシステムを導入しやすいのもiPaaSのメリットです。
製品によってある程度の知識は必要ですが、複数のクラウドサービスやシステムを利用する企業が増加傾向にあることから、iPaaSのニーズは徐々に高まりつつあります。