DX戦略とは?策定のプロセスやフレームワーク・成功事例を解説
IT技術の進展が著しい近年、幅広い業界において「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が注目されています。
DXを推進するためには、漠然とデジタル技術を活用するのではなく、戦略を立てたうえで必要な取り組みに着手する必要があります。しかし、DX戦略推進プロセスや成功のコツが分からず、なかなかDX推進を実現できていないという企業も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、DX戦略の概要・DX戦略のプロセスと役立つフレームワーク・DX戦略の成功事例を徹底解説します。DX推進を実現したい企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. DX戦略とは
そもそも「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、デジタル技術を活用してビジネスモデルに変革を起こし、市場における競争の優位性を確立することを指します。IT技術が著しく発展する近年、デジタルサービス・クラウドサービスを活用したビジネスモデルは急速に普及しており、あらゆる業種においてDXの推進が求められています。
そしてDX戦略とは、DXを実現するためのプロセスやロードマップを策定して戦略を立てることを指します。
DXは、アナログだった従来の業務を単純にデジタル化するだけで実現できるわけではありません。DXによって顧客価値の創造や経営課題の解消まで叶えられた状態が、真のDX推進と言えます。
このように、DX推進はあくまで成果を得るための手段です。DX戦略は、手段が目的化してしまわないために欠かせない取り組みと言えるでしょう。
また、企業にとってDX戦略が必要な理由には、主に下記の2つが挙げられます。
●「2025年の壁」への対応
経済産業省が公表した「DXレポート」によると、企業の既存システムの老朽化・複雑化・ブラックボックス化によって、2025年以降は年間最大12兆円の経済損失が生まれる可能性があると示唆されています。この「2025年の壁」への直面を防ぐためには、戦略を立てたDX推進が重要です。
出典:経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
●消費者ニーズ・働き方改革への対応
ビジネス環境・IT環境の変化が著しい近年、消費者ニーズも日々変化するようになりました。加えて、テレワークや在宅勤務などを取り入れた社員の柔軟な働き方も多くの企業に求められるようになっています。こうした幅広い対象のニーズ変化に対応すべくDX推進の重要性が高まっており、適切な取り組みを打ち立てるためにもDX戦略が欠かせません。
2. DX戦略のプロセスと役立つフレームワーク
DX戦略を進めるにあたっては、ただやみくもにテクノロジーを導入するのではなく、達成すべき目標を定めたうえで推進ステップを踏み、ときには失敗しながら学習することが重要です。
ここからは、DX戦略のプロセスと、プロセスの策定に役立つフレームワークを紹介します。
2-1. 自社のおかれた環境を把握する
DX戦略を立てる際は、まず自社のおかれた環境を把握することが重要です。
2020年から流行した新型コロナウイルス感染症の影響によって、環境の変化に対応でき、ビジネスへの影響も少なかった企業とそうでなかった企業の差が大きく生まれました。環境変化によるビジネスへの影響をコントロールするためには、DX推進指標を利用した分析を行い、自社のおかれた環境を把握することが大切です。
また、自社のおかれた環境を把握するためには、「PEST分析」というフレームワークも役立ちます。PEST分析とは、外部環境を下記4つの要因に分類し、自社のおかれた環境や自社に与える影響を検討する分析方法です。
PEST分析を用いて自社のおかれた環境を把握することで、DX戦略の方向性を明確にしたり、市場の将来性や変化を予測したりすることにつながります。
2-2. 自社のビジョンを策定する
自社のおかれた環境を把握したあとは、自社のビジョン策定に取り組みましょう。そもそもビジョンとは、「自社のあるべき姿・目指すべき組織像」であり、DX推進においては核となる重要な概念となります。
ビジョンを策定するためには、まず基本となる企業理念や自社の強みを明確にすることが大切です。そのうえで、10年~20年後の未来を想像し、自社の強みとテクノロジーを掛け合わせて果たすべき役割を明確にしましょう。
DX戦略ビジョンの策定には、「SWOT分析」というフレームワークが役立ちます。SWOT分析とは、事業の状況を下記4つの項目に整理し、自社の強み・弱みといった内部環境や自社をめぐる外部環境を検討する分析方法です。
SWOT分析を用いることで、事業やDXの戦略方針がより明確化し、長期的な視点によるDX戦略の立案ができるようになります。
2-3. 自社が取り組むべき領域を決める
自社のビジョンを策定したあとは、自社が取り組むべき領域を定めましょう。取り組み領域としては、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」の3つが挙げられます。
DX推進の成功パターンでは、基本的にデジタイゼーションからデジタライゼーション、そして最後にデジタルトランスフォーメーションと、順番に進行していることが特徴です。とは言え、必ずしも順番通りに実行しなければならないわけではありません。
また、各フェーズにおいては、「DXフレームワーク」が役立ちます。DXフレームワークとは、DX推進の成功に向けたデジタイゼーション・デジタライゼーション・デジタルトランスフォーメーションの3フェーズの指標を用いて、DXに関する各アクションを取り組み領域とDX段階に分けて整理したものを指します。
目指すべきDXをゴールに設定し、段階ごとに逆算して適切なアクションを検討できるだけでなく、作成したDXフレームワークを用いればDX成功に向けたパターン化も可能となります。
2-4. DX戦略を決定し結果を評価する
ここまでのプロセス通りにDX戦略を決定したあとは、併せてDX推進に向けた社内体制を新たに構築し、必要なIT人材を揃えましょう。あらゆる部署からの理解・協力を得るためにも、段階ごとに進めて小さな成功体験を着実に積み上げたり、特定の部署から取り組みを進めていったりすることがポイントです。
最終的に社内DXを実現するためには、すべての部門・人材を巻き込み、多くの時間を費やす必要があります。そのなかで、ときには失敗事例を生み出すケースもあるでしょう。しかし、失敗をただの失敗で終わらせないよう、PDCAサイクルを有効に回すことが大切です。
PDCAとは、下記4つのサイクルを繰り返し行って業務品質を継続的に改善するフレームワークです。
PDCAサイクルを回すことで、ビジネスモデルの変革というDX推進の最終的なゴールに効率良く近付けられるでしょう。
3. DX戦略の成功事例
DX戦略を策定する際は、実際にDXを推進した日本企業の成功事例を参考にすることもポイントです。ここでは、DX戦略を成功させた2社の事例を紹介します。
●東海東京FH
東海東京証券を核とする証券持株会社の東海東京FHは、事業環境の変化に応じた成長の維持を目的に、「生産性向上」「新たなビジネスモデルの創生」の2つの軸でDXに取り組んでいます。その独創的なDX戦略が高く評価され、DX銘柄では2021年・2022年と2年連続で選定されました。
出典:東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社「デジタル」
●SBIインシュアランスグループ
SBIグループ内の保険事業を統括する保険持株会社のSBIインシュアランスグループは、保険業界のイノベーターを目指してDX推進に取り組んでいます。取り組みの一環として導入されたAI搭載型システムは新たな顧客体験の提供・社員の業務効率化といった点が高く評価され、DX銘柄2022で初めて選定されました。
出典:SBIホールディングス「経済産業省「DX銘柄」初選定について ~昨年の「DX注目企業」への選定に続き、DXへの取り組みが高評価~」
まとめ
DXとは、デジタル技術を活用してビジネスモデルに変革を起こし、市場における競争の優位性を確立することです。IT技術の発展が進み、顧客ニーズの移り変わりや働き方改革の影響によって外部環境が大きく変わりやすい近年、DX推進は幅広い業界で求められています。
真のDX推進を目指すためには、DX戦略が欠かせません。DX戦略を進める際は、自社のおかれた環境を把握したうえで自社のDXビジョンを策定し、定めた取り組み領域にもとづいて戦略を実行・評価していくことが大切です。
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